2008年01月02日

21.帰り支度

スズキさんとマークを駅に送った後、タラはもちろん、軍司、真鍋も再び眠りについた。
すっかり目の覚めてしまった俺、阿守、山本さんは、ホテルの休憩スペース付き自販機コーナーで一服。
山本さんにおごっていただく。

ホテルのロビーや通路の各所で、フジロッカー達がちらほらと横たわっている。
よくよく考えれば、車やテントよりもこちらのほうが遥かに快適だったのではないか。

しばらく談笑していると、中原さんが現れた。
「ああ、中原さん、生きてはったんですね」
と阿守が声をかけ、俺と阿守は胸をなでおろした。
「中原さん、あれは仰向けだったんですか?うつ伏せだったんですか?」
との阿守の質問に
「ん?うつ伏せだったよ」
と答える中原さん。
額を地面につけ、まっすぐ下を向いて寝る人の姿を、そういえば俺は初めて見たような気がする。

「いいっすか?」
と、中原さんが山本さんに煙草をねだる。
「どうぞ」
と煙草を一本差し出す山本さん。
そういえばこの人が自分のポケットから煙草を出すのをあまり見たことがない。
「いや〜、いつもすいません。あ、でも煙草はすいます」
と、得意の駄洒落が冴え渡る。
いつも人から煙草を譲り受けている印象のある中原さんだが、時々カートンで返しているらしい。

日が高くなってくると共に、ちらほらとメンバーが起きだしてくる。
皆が起きて駐車場に集まった時点で、テントをバラそうということになり、キャンプサイトへ。
うち数人は車に残って散らかっていた車の中を掃除する。

正直なところをいえば、このままテントを放置して帰りたいのだが、そういうわけにもいかない。
蓄積された疲労が回復せぬまま、一行は疲れた体に鞭打ち自分たちのテントを目指してキャンプサイトを進む。
昨夜の寒さがウソであるかのように、暑い。
自分達のテントに着くころには、全員汗だくになっていた。

テントをばらし、キャンプサイトを下りる。
荷物を持って歩くのが相当きつい。

駐車場にもどり、すっかり片付いた車の中へ荷物を積み込んだあと、一行はホテル外のカフェスペースで一服した。
その時、どこからともなく一匹の蜂が飛んでくる。
結構な大きさで、
「うわ、蜂や」
と気付いたものがそれを避けていると、
「きゃあああ!!」
というカン高い叫び声が辺りに響いた。
何事か、と思い周りを見ると、雄作が自分より小さい陳さんの陰に隠れて、辺りの様子を伺っていた。
どうやら叫び声の発信源は雄作らしい。
「俺ホント虫ダメなんすよ〜」
と、泣きそう顔で訴えられた。

最後の最後でおもしろいものを見ることが出来た。
posted by hilao at 09:52| Comment(1) | 本文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月03日

22.終宴

当初、せっかく自然の綺麗なところにきたのだから、大自然をバックにアーティスト写真を撮ろうではないか、との予定だったのだが、
「一刻も早く帰って寝たい」
という阿守の意見と、それに同意するメンバーの意向により、写真撮影は却下された。
第一、大自然が似合うようなバンドでもないし。
代わりに、駐車場でレポート用のしょーもない写真を撮った。

「一刻も早く帰りたいが、それよりも先に風呂に入りたい」
と誰かが言った。
結局、昨夜入浴したのは俺と山本さんぐらいだった。
ちなみに中原さんはまだ現場に残るらしく、既に一行から離脱している。

「近くにいい温泉がありますよ」
幼少の頃、合宿か何かで苗場プリンスホテルを訪れたことのある雄作がそう言ったので、少し遠回りになるが、温泉へ向かった。

温泉に到着するや、一行のほとんどが喜び勇んで浴場に駆け込んだが、阿守だけは入らなかった。
この男、公衆浴場が大嫌いなのだ。
曰く
「美女に囲まれての入浴ならいざ知らず、知らんオッサンの裸に囲まれての入浴なんて、狂気の沙汰だよ」
とのこと。

阿守を覗く一行は見晴らしのいい露天風呂に入った。
ぬるま湯で疲れを癒していると、ここにも蜂登場。
周囲を見回してみると、さっきまで確かにいた雄作の姿が見えない。
数十秒ほどしたあたりで、水面がせりあがり、雄作が少しだけ顔をだした。
なるほど、湯中に潜って難を逃れようとしたらしい。
雄作は注意深く辺りを見回したあと
「ボクもう出ます」
といって露天風呂を後にした。

温泉をあとにした一行は帰路に着いた。
これにて『SIBERIAN NEWSPAPER、フジロック苦難の旅』は終わりを迎えたのだった。


「そういえば、隣のテントのヤツが、来年のフジロックがどうのこうのって言うてたで」
と、思い出したように言った。
それを聞いたタッキーが
「今年のフジロックが終わったときから来年のフジロックが始まる、ていうもんなぁ」
と、出来の悪い格言めいたものを口にした。

もしフジロックに来る前にその言葉を聞いていたら
「出演アーティストも決まってないのに、なにが来年のフジロックじゃ」
と一笑に付していただろう。
だが実際フジロックの会場に来てみると、多くのフジロッカーたちは出演アーティスト云々以前に、フジロックフェスティバルそのものを楽しんでいるようだった。
実際、2007年フジロックには目玉アーティストがいない、といわれていた。
にも関わらず、チッケッとの売上げは決して悪くないものだったらしい。

2008年も多くのフジロッカーたちがこの地を訪れるだろう。
そこにSIBERIAN NEWSPAPERの名があろうとなかろうと。
だが、願わくば2008年もこの地に名を列ね、より多くのフジロッカーたちを魅了したものだ。


グズなオイラがフジロック
−おわり−
posted by hilao at 07:36| Comment(48) | 本文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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