2008年01月03日

22.終宴

当初、せっかく自然の綺麗なところにきたのだから、大自然をバックにアーティスト写真を撮ろうではないか、との予定だったのだが、
「一刻も早く帰って寝たい」
という阿守の意見と、それに同意するメンバーの意向により、写真撮影は却下された。
第一、大自然が似合うようなバンドでもないし。
代わりに、駐車場でレポート用のしょーもない写真を撮った。

「一刻も早く帰りたいが、それよりも先に風呂に入りたい」
と誰かが言った。
結局、昨夜入浴したのは俺と山本さんぐらいだった。
ちなみに中原さんはまだ現場に残るらしく、既に一行から離脱している。

「近くにいい温泉がありますよ」
幼少の頃、合宿か何かで苗場プリンスホテルを訪れたことのある雄作がそう言ったので、少し遠回りになるが、温泉へ向かった。

温泉に到着するや、一行のほとんどが喜び勇んで浴場に駆け込んだが、阿守だけは入らなかった。
この男、公衆浴場が大嫌いなのだ。
曰く
「美女に囲まれての入浴ならいざ知らず、知らんオッサンの裸に囲まれての入浴なんて、狂気の沙汰だよ」
とのこと。

阿守を覗く一行は見晴らしのいい露天風呂に入った。
ぬるま湯で疲れを癒していると、ここにも蜂登場。
周囲を見回してみると、さっきまで確かにいた雄作の姿が見えない。
数十秒ほどしたあたりで、水面がせりあがり、雄作が少しだけ顔をだした。
なるほど、湯中に潜って難を逃れようとしたらしい。
雄作は注意深く辺りを見回したあと
「ボクもう出ます」
といって露天風呂を後にした。

温泉をあとにした一行は帰路に着いた。
これにて『SIBERIAN NEWSPAPER、フジロック苦難の旅』は終わりを迎えたのだった。


「そういえば、隣のテントのヤツが、来年のフジロックがどうのこうのって言うてたで」
と、思い出したように言った。
それを聞いたタッキーが
「今年のフジロックが終わったときから来年のフジロックが始まる、ていうもんなぁ」
と、出来の悪い格言めいたものを口にした。

もしフジロックに来る前にその言葉を聞いていたら
「出演アーティストも決まってないのに、なにが来年のフジロックじゃ」
と一笑に付していただろう。
だが実際フジロックの会場に来てみると、多くのフジロッカーたちは出演アーティスト云々以前に、フジロックフェスティバルそのものを楽しんでいるようだった。
実際、2007年フジロックには目玉アーティストがいない、といわれていた。
にも関わらず、チッケッとの売上げは決して悪くないものだったらしい。

2008年も多くのフジロッカーたちがこの地を訪れるだろう。
そこにSIBERIAN NEWSPAPERの名があろうとなかろうと。
だが、願わくば2008年もこの地に名を列ね、より多くのフジロッカーたちを魅了したものだ。


グズなオイラがフジロック
−おわり−
posted by hilao at 07:36| Comment(48) | 本文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月02日

21.帰り支度

スズキさんとマークを駅に送った後、タラはもちろん、軍司、真鍋も再び眠りについた。
すっかり目の覚めてしまった俺、阿守、山本さんは、ホテルの休憩スペース付き自販機コーナーで一服。
山本さんにおごっていただく。

ホテルのロビーや通路の各所で、フジロッカー達がちらほらと横たわっている。
よくよく考えれば、車やテントよりもこちらのほうが遥かに快適だったのではないか。

しばらく談笑していると、中原さんが現れた。
「ああ、中原さん、生きてはったんですね」
と阿守が声をかけ、俺と阿守は胸をなでおろした。
「中原さん、あれは仰向けだったんですか?うつ伏せだったんですか?」
との阿守の質問に
「ん?うつ伏せだったよ」
と答える中原さん。
額を地面につけ、まっすぐ下を向いて寝る人の姿を、そういえば俺は初めて見たような気がする。

「いいっすか?」
と、中原さんが山本さんに煙草をねだる。
「どうぞ」
と煙草を一本差し出す山本さん。
そういえばこの人が自分のポケットから煙草を出すのをあまり見たことがない。
「いや〜、いつもすいません。あ、でも煙草はすいます」
と、得意の駄洒落が冴え渡る。
いつも人から煙草を譲り受けている印象のある中原さんだが、時々カートンで返しているらしい。

日が高くなってくると共に、ちらほらとメンバーが起きだしてくる。
皆が起きて駐車場に集まった時点で、テントをバラそうということになり、キャンプサイトへ。
うち数人は車に残って散らかっていた車の中を掃除する。

正直なところをいえば、このままテントを放置して帰りたいのだが、そういうわけにもいかない。
蓄積された疲労が回復せぬまま、一行は疲れた体に鞭打ち自分たちのテントを目指してキャンプサイトを進む。
昨夜の寒さがウソであるかのように、暑い。
自分達のテントに着くころには、全員汗だくになっていた。

テントをばらし、キャンプサイトを下りる。
荷物を持って歩くのが相当きつい。

駐車場にもどり、すっかり片付いた車の中へ荷物を積み込んだあと、一行はホテル外のカフェスペースで一服した。
その時、どこからともなく一匹の蜂が飛んでくる。
結構な大きさで、
「うわ、蜂や」
と気付いたものがそれを避けていると、
「きゃあああ!!」
というカン高い叫び声が辺りに響いた。
何事か、と思い周りを見ると、雄作が自分より小さい陳さんの陰に隠れて、辺りの様子を伺っていた。
どうやら叫び声の発信源は雄作らしい。
「俺ホント虫ダメなんすよ〜」
と、泣きそう顔で訴えられた。

最後の最後でおもしろいものを見ることが出来た。
posted by hilao at 09:52| Comment(1) | 本文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月01日

20.起床

カチリ、という音で目が覚めた。
見れば、阿守が煙草に火を点け、自分が持ってきたイスに座っていた。
「・・・おはよう」
「ああ、起こしてしもた?ゴメンゴメン」
「いや、ええよ」
「びっくりしたわ。1人で寝てて、気がついたら3人になってた」
「ああ、雄作と陳さんな」
「・・・ところでそれ・・・誰?」
「ああ、中原さん。裏か表かわからんやろ?」
「いや、それ以前に・・・生きとん?」
「・・・さぁ?」
時計を見ると、ちょうど5時ぐらいだった。
1時間ほどしか眠っていないのだが、妙に目が冴えてしまったのでそのまま起きることにした。
もしかしたらまだスズキさんとマークがいるかもしれないので、折角だから一言挨拶だけでもしようと思い、2人で一旦駐車場に戻った。

車では山本さん、真鍋、軍司、タラが眠っていたが、スズキさんとマークの姿はなかった。
どうやら既にバス乗り場に行ってしまったらしい。

急激な空腹感を覚えた俺は、自分のカバンから持参していたカロリーメイトを取り出し、車からさほど離れていない河原の土手にしゃがみ、もそもそとそれを食べ始めた。
阿守も近くに座り、煙草をふかしていた。

カロリーメイトを食べながら川の対岸をぼーっと見ていると、行列が目に入った。
目で追っていくうちに、それがとんでもない長さだということに気付く。
そして、その先頭にはバス乗り場があった。
俺はなんとなく阿守に話しかけた。
「なあ、あの行列にスズキさんとマークがおるんやんなぁ」
「そうやろなぁ」
「5時ぐらいに行くとか言うてたから、まだ後ろの方やろなぁ」
「多分なぁ」
「それで、6時だが7時だかの電車に間に合うかなぁ」
「間に合わんやろなぁ」
どうやらここは車で送っていくのが正解だろう、ということで、スズキさんとマークに連絡し、駐車場に戻ってくるよう告げ、山本さんを起こす。

10分ほどでスズキさんとマークが戻ってくる。
「いや〜、1時間半前にいったら充分やろと思っとったけど、甘かったわ」
2人を車に乗せ、駅へ向けて出発。

山本さんを起こした時点で軍司と真鍋も一緒に起きたのだが、タラは眠ったままだった。
車が出発してしばらくしたあと
「あれ・・・?もう帰ってんの?」
とタラは一時目覚めたのだが
「夢や。黙って寝とったらええ」
と阿守に言われるや
「はい」
といって再び眠りについた。

車は無事駅に到着し、スズキさんとマークはなんとか電車に乗ることが出来た。
posted by hilao at 02:25| Comment(1) | 本文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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